家族の形【飼うきっかけ】
「せっかく を驚かせようと思ったのに……。あの人が言ったから台無し
になっちゃったよ……」
父はせっかく内緒にしていたことが、猫を見せる前にばれてしまって残念そうにしていた。
「別に大丈夫だよ」
正直、うまくいったとして私が驚くかどうか分からなかったかもしれない。サプライズ的なものに驚くことはあまりないから。頑張って反応しようとすると不自然になってしまう。だから、これはこれで良かったのかもしれない。
「ありがとうね。私のために」
本当に嬉しかった。……だけど、
「なんで飼おうと思ったの?」
父は答えなかった。
けど、何となく感づいている事がある。それは少し前のあの出来事だ。
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母の仕事のお迎えをしようとしていた時。
「お母さん、何やってるんだ?」
母が歩道橋の下で何かやっていた。
すぐに車から降りて、聞いてみると
「猫の鳴き声がするの」
私は歩道橋の下を母のスマホの光で確認してみた。
「猫いる」
可愛い。そして、同時に飼いたいと思った。言葉を濁しながら、飼いたいという気持ちを母に伝えると
「ちゃんと責任を持って飼えるの?お世話できるの?飼いたいという気持ちだけでは飼えないよ」
その後も母に色々と言われてしまった。確かに、命をしっかりと預かれるかどうか分からない。そんな生半可な気持ちでやるぐらいなら飼わない方がいい。
飼うのを断念し、名残惜しそうに歩道橋の下を覗いてみると、あることに気づいた。
「あっ、子猫なんだ!」
小さな子猫だった。確かに子猫の鳴き声だったな……。
その時、何も言ってなかった父が突然
「本当に?お母さん、スマホ貸して!」
と言い、スマホを手に取って歩道橋の下を覗いた。父が確認した後、私は少しだけ父の様子が違うように見えた。
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「あれからかなぁ」
確証はないが、他にこれといった出来事もない。もしかしたら、これ以外にもっと決めるきっかけになったことはあるのだろう。だが、含んでいることは確実だと思う。
……まあ飼うきっかけは何だっていい。ただ、猫を飼えることはこの上なく幸せだ。
雪猫