家族の形【新しい家族】
2021.○/△
今日は母の誕生日だ。
そして、家族に連れてこられて今いる場所は、市役所。
平日なのに急がされてここにきたのには、絶対何か意味があるのだろう。
しばらく待っていると、市役所の人がきた。
「猫ちゃんに会いに来た人ですか?」
…………えっ⁉
一瞬、耳を疑った。
「あっ、はいそうです」
父は苦笑いしながら、そう答えた。
今まで、猫を飼いたいと言っても上手く受け流されていた。最近、父が猫アレルギーだと発覚したこともあって、もう絶対に猫は飼えないと思っていた。まさか本当に飼えるなんて!
いや、もしかしたら思い違いかもしれない。
私は、すぐに父に聞いた。
「猫飼えるの?」
父は気悪くそうに
「うん」
と答えた。
案内されると、そこには3匹の猫がいた。保護された姉弟の猫らしい。そして、私たちが飼うのは1番上のメスのサバトラの子だ。小っちゃくて、顔が整っていて目がきゅるんとしている。
「可愛い……」
思わずにやけながら、その子に見とれてしまっていた。
「抱っこしますか?」
職員さんがその子を差し出して聞いてきた。
「はい!」
私は、無意識に声が大きくなってしまっていた。
抱っこしてみると、思ったよりふわふわしていた。でも、小さくて柔らかくて潰してしまいそうで怖かったので、すぐに職員さんに渡した。
「どう?責任をもって飼える?」
突然すぎてまだ、猫を飼う、命を預かるという意識はすぐにはもてなかった。だが、飼いたいと強く願っていたことが今叶っただけだ。命を預かるということを分かっていて、それでも飼いたいと言っていたことが。
私は、絶対に幸せにするという意志で強く頷いた。
雪猫