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ほんのひとかけらの多様性

父はよく車のディーラーに足を運ぶ。それにあわせて私もついていく。何で、車をもっている(しかもまだまだ使える)のにまた来ているのか。父はディーラーのチラシを見せてこう言う。
「ここに行くとティッシュ箱が貰えるんだって」
なんだ。そういう目的か。でも、ティッシュなら家に山ほどあるじゃん。

また疑問をもつ。父が自動車を好きなのは知っているが、わざわざ立ち寄らなくても。購入する予定なんてないのに。試乗もして。向こうは少しの可能性を信じてか、しっかりと接客してくれる。何だか申し訳ない。


あるとき(まーたディーラーに行って試乗をしていたとき)。父と店員さんが話しているのが聞こえる。車は勿論快適にスムーズに進んでいく。暖かい空気が車内を包む。なんか眠たくなってきた。…………。でも、あくまで人の車だし寝たら迷惑かけちゃうよな。
私はうとうとしながらも時々目を大きく開け欠伸を我慢しピーンと背を伸ばしたまま無言でいた。

そしてようやく試乗が終わった。だが、店員さんの言葉で眠気が一気に覚めた。

「奥様も試乗してみますか?」

へ???

最初誰に対して言っているのか分からなかった。なぜなら、ここに乗っているのは父と私と店員さんだけだからだ。(母は仕事)

店員さんの言葉に動揺していると、父は困った感じで「未成年ですよ?」と答えた。

「……あ!すみません。」

どうやら店員さんの誤解だったらしい。私を父の奥さんだと勘違いしたそう。何故だ?父にはチビチビ言われてるのに。もしかして、私の行動が大人すぎるものだったから⁉

…………冗談はさておき、その後は少し気まずい感じでお店を出た。結局何もしてない(そんなものなのかな)。


私は後日、店員さんが私を勘違いした理由を考えてみた。

一つは行動が良い意味で変だったからだと思う。
なんかそのときはふわふわとしていてそれが子供らしくない佇まいに見えてしまったのかもしれない。

他に考えられるのは、本当に私を奥さんだと思ったということだ。

私はそのときは身長が小さく(チビ)て子供っぽい服だった。でも、奥さんと思った。てことは、店員さんは子供な感じの私を見た目で判断しない=人を見た目で判断しないということかも。とても可能性は低いけど。

でもそれなら素敵な店員さんだったと思う。今の時代、決めつけはよくない。多様性が求められているし、同じ人はいない。色んな人がいていい。そう思ってくれてるってこと。

無理矢理多様性に繋げた感はある。だけど多様性は実際に形は見えない。私はこういうのも「多様性」になると思う。

勘違いで向こうは恥ずかしい気持ちになったかもだけど、私は大人に見られたっていうのは少し誇りなった。大人に近づけてたって。

結果、私は多様性はこんな些細なことで考えるきっかけになったらいいと思う。「多様性は身近にあふれている」

                                雪猫

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